- 人工透析装置とは何ですか?
腎臓の機能が低下・消失して腎不全に陥り、尿の出なくなった患者さんの血液を循環する装置です。患者さんの血液を取り出し、ダイアライザーと呼ばれる特殊な膜に血液を流して余分な水分や老廃物を取り除きます。この装置の運転・操作・管理に臨床工学技士が活躍しています。
- 人工心肺装置とは何ですか?
心臓外科手術で行う先天性心疾患や大動脈解離の治療、人工弁置換術の際、心臓を一時的に停止し手術を行います。その間、患者さんの心臓と肺の機能を代行し、全身に酸素化された血液を送る装置が人工心肺装置です。この装置の運転は臨床工学技士の業務のひとつで、まさに患者さんの命を預かる重大な仕事です。
- 人工呼吸器とは何ですか?
患者さんが自分で息を吸ったり吐いたりする自発呼吸で十分酸素を吸えないあるいは二酸化炭素を吐き出せない場合に、人工的に呼吸を補助する機械です。病気の状態に合わせて様々な方法で呼吸を調整します。また、麻酔器と組み合わせて手術中の呼吸を管理します。
- 臨床工学技士になった場合、大学卒か専門学校卒かによって、違いはあるのでしょうか?
- 時間をかけてじっくり勉強に取り組みたい場合は、大学に、早く現場に出て経験を積みたい場合は専門学校・短期大学が選択肢になるかと思います。大学卒の臨床工学技士の初任給は、専門学校卒に比べ一般的に数千円程度違います。しかし、これはあくまで初任給です。3年制で就職して1年働いたときの昇給を考えると、一概にどちらがいいとは言えなくなります。就職後の病院内での肩書きは、違いはありません。技士長などに昇進できるか、また生涯給与がどの位になるかは実力次第と言ってよいかと思います。大学では4年次に「卒業研究」として専門分野に関連する課題研究に取り組んでいます。幅広い視点で仕事をしてみたいと思われるのであれば大学を選ばれるのがよいのではないでしょうか。また、大学院進学という目標が最初からあれば大学卒の方が近道かもしれません。しかし、大学院進学後、学校の教員として臨床工学技士の教育に当たるのであれば、多くの場合5年以上の臨床経験が重視されることを念頭においてください。
- 物理と数学が苦手なのですが、それでも臨床工学技士を目指せるでしょうか?
- 物理と数学が苦手でも臨床工学技士を目指せるか、ということですが、もちろん可能です。しかし、これは物理と数学の勉強をしなくても国家試験に合格するということではありません。
高校の物理Iで履修する、
・生活を支える電気
・熱や光をうみ出す電気
・力をうみ出す電気
・情報を伝える電気
・波の性質
・音と音波
・光と光波
・運動の表し方
・力のはたらき
・運動の法則
・仕事とエネルギー
・力学的エネルギー
・熱とエネルギー
・電気とエネルギー
・エネルギーの変換と保存
は、全て関連します。これは、機器の保守管理が臨床工学技士の重要な業務の1つであるからです。
人工透析で使われるポンプの原理、血圧や呼吸機能のモニタの原理などの基礎も学ぶ必要があります。
また、物理IIでは、
・物体の運動
・円運動と万有引力
・静電気
・電流と直流回路
・磁界と電流
・電磁誘導と電磁波
・原子, 分子の運動
・原子, 電子と物質の性質
・量子論と原子の構造
・原子核と素粒子
などを学びますが、電気の基礎、電磁波の基礎は、医療機器の電気的安全確保、患者様の状態をベッドから離れたところでも把握する院内無線通信機器などの理解に重要です。
また、電気の基礎、情報処理の基礎などを学ぶ上で、簡単な微積分、指数関数、対数関数、三角関数などの数学の勉強も欠かせません。
これらの科目は高校時代に履修をしていなくても、本学に入学後、初歩から臨床工学技士業務に関連づけて教わります。今は苦手意識を持っていても、臨床工学技士になるという目的意識をはっきり持っていれば勉強して習得できる科目です。入学した多くの先輩も数学や物理に苦手意識を持っていましたが、克服して国家試験に合格し、臨床工学技士として活躍しています。
- 臨床工学技士の求人について教えてください。
- 臨床工学技士の進路には、医療機関への就職、企業への就職、大学院への進学などがあります。医療機関への就職は、企業のように毎年決まった時期に定期採用があるわけではなく、欠員が生じた場合や、人員増加の必要がある場合に、随時求人が出される形が一般的です。全国的に見ても、臨床工学技士は依然として必要とされており、本学にも卒業生数の約10倍にあたる求人数があります。地元の病院への就職については、希望条件によって状況が異なります。例えば、「自宅から1時間以内で通勤できる大規模病院に勤務したい」といった条件の場合、必ずしも希望通りの就職が実現するとは限りません。しかし、臨床工学技士は専門性が高く、経験を積んだ後に転職し、地元の医療機関で活躍している卒業生も多く見られます。また、大学院へ進学し、大学や研究所、医療機器メーカーなどで医療機器の研究・開発に携わる道を選ぶことも可能です。
- 臨床工学技士の国家試験について教えてください。
- 本学では、過去26年間毎年全国合格率より高い合格率を出しています。国家試験の難易度(全国合格率にほぼ比例)に左右されない、4年間の教育を通じた確かな養成力があります。