現在の世界的課題である「カーボンニュートラル」の実現には、産業界のエネルギーをクリーンなものに変えるだけでなく、CO2の主要な排出源の脱炭素化が重要な課題です。製造業はCO2総排出量の3分の1を占め、とりわけ鉄鋼業がその3分の1という高い割合になっています。このため鉄鋼業界は(公財)鉄鋼環境基金を設立し、解決すべき環境保全技術の課題として、(1)地球環境問題、(2)資源循環問題、(3)大気環境保全問題、(4)土壌・水質保全技術の開発研究に対して助成研究成果表彰を行っています。
この度、本学薬学部客員教授の増田秀樹氏の研究課題「炭酸ガスを捕捉し有用性物質へ変換する革新的触媒技術の創製」に対して、(公財)鉄鋼環境基金から地球環境問題に対する技術開発に貢献するとして、鉄鋼技術賞が授与されました。受賞理由(財団評)は、「イオン液体の特性を利用して電気化学的にCO2からメタノールやエタノールへの高効率変換に成功し、将来のCCS/CCU分野に貢献することが期待され、カーボンニュートラル実現に向けた重要な研究成果である。」というものです。
CO2を変換する触媒技術は数多く開発されており、通常は CO(一酸化炭素)やHCOOH(ギ酸)が生成されますが、増田氏の技術ではエチレンやエタノールという有機合成でも容易ではないC-C結合が形成されるもので、C-C結合の形成は医薬品など有用性の高い物質の合成に繋がる画期的な技術開発です。
(注)CCSはCarbon dioxide Capture and Storageの略で、「二酸化炭素の回収・貯蔵」という意味で、CCUはCarbon dioxide Capture, Utilizationの略で、「二酸化炭素の回収・利用」という意味です。
-副学長(大学院・研究担当)鈴木宏治-