本学教員によるリウマチ性関節炎に対する鍼治療の主要効果因子の役割に関する論文が Frontiers社の免疫学専門雑誌Frontiers in Immunology誌に掲載されました

2026年02月26日

伝統的な鍼治療効果の生物学的作用機序については、これまでは主に神経系を介するという考えが一般的でしたが、近年では非神経系の作用機序が注目を集めています。

この度、鍼灸サイエンス学科の有馬 寧教授と天津中医大学の郭義教授の研究チームは、組織を構成する線維芽細胞が鍼の機械的刺激を統合・増幅・変換することにより鍼治療の効果を媒介している可能性を示しました。研究では、関節リウマチ(RA)モデルであるアジュバント誘発性関節炎マウスモデルに対して鍼治療を行い、鍼刺激局所における分子生物学的・組織学的解析が行われました。その結果、鍼刺激局所では線維芽細胞が活性化されるとともに、細胞間の機械的伝達や細胞外マトリックス再構築に関連する様々な分子が発現増加し、鍼治療による機械的刺激が線維芽細胞内の機械的感覚およびシグナル伝達経路を活性化することが示唆されました。さらに、組換えアデノ随伴ウイルスによるアポトーシスを介した刺鍼部位での線維芽細胞の選択的除去によって、鍼治療効果の著しい減弱、コラーゲン線維沈着の減少、肥満細胞脱顆粒の減少、細胞外マトリックス(ECM)関連分子の発現低下が認められました。

この結果は、鍼治療による機械的刺激が筋膜組織内の線維芽細胞の機械的感覚およびシグナル伝達経路を活性化し、局所炎症性微小環境を調節してECMの動的再構築と生化学的シグナル伝達系を活性化し、感覚神経機能に影響を与えることによって病理学的反応および疼痛反応を緩和することを示唆しています。本研究成果は、鍼治療の細胞生物学的機序に関する理解を深め、臨床現場における鍼治療の有効性を高めるための線維芽細胞を標的とした新規治療法の開発に寄与するものと考えられます。

本研究は、本学で共同研究を行った天津中医薬大学の涂世偉研究員、鍼灸サイエンス学科の川ノ口 潤 准教授、髙木 健 准教授、有馬 寧 教授らによって行われました。

掲載論文
Shi-Wei Tu, Jun Kawanokuchi, Ken Takagi, Yang-Yang Liu, Jun-Yi Li, Kai-Yuan Deng, Yan-Wei Li, Kai-Fang Yao, Zhi-Han Chen, Ze-Zhi Fan, Zhi-Fang Xu, Yu-Ping Sa, Xiao-Wei Lin, Shen-Jun Wang, Yu-Xin Fang, Xia Liu, Ning Ma, Yi Guo. Fibroblasts as key effectors of acupuncture in treatment of rheumatoid arthritis. Front Immunol. 2026; 17:1715313. DOI: 10.3389/fimmu.2026.1715313

-副学長(大学院・研究担当)鈴木宏治-