本学教員らによる、冠動脈CT検査時に低線量撮影の追加で心機能解析を可能にした研究成果がSpringer社のEuropean Radiology 誌に掲載されました

2025年12月01日

従来、心臓の動きを詳しく検査するには、心エコー検査や心臓MRIが必要でしたが、装置の制限や検査時間、患者の負担などの様々な課題がありました。また、CTで心機能を調べる方法は被ばく線量が増加するという問題がありました。

この度、本学放射線技術科学科 永澤直樹准教授らは、冠動脈の狭窄を調べる冠動脈CTアンギオグラフィー(CCTA)に、ごく短時間の心臓4DシネCT(3D-CTに時間軸を加えた撮影法)を追加することで、心臓の動き(心機能)も同時に評価できる新しい撮影法を開発し実証しました。研究ではMRIのデータを用い、造影剤が体内を循環し再び心臓に戻ってくるタイミングを計測し、造影剤が心臓に再度戻る「再循環期」は最初に心臓に到達した時から約20秒後であることを明らかにしました。このタイミングで心臓4DシネCTを行うと、左心室・右心室ともに良好なコントラストで撮影でき、心臓の動きを高い精度で評価できるとともに、心筋梗塞の評価も心エコー検査より優れていることがわかりました。この検査での放射線量の増加は約1 mSvであり、標準的なCCTA(約2 mSv)に4DシネCT(約0.9 mSv)を加えても、合計で 2.9 mSvと低線量に抑えられることが判りました。

本検査法は、低被ばく線量で「冠動脈の詰まり具合」と「心臓の動き具合」を1回のCT検査で測定でき、心臓の構造と機能を同時に評価できる検査として今後の臨床への応用が期待されます。

本研究は、三重大学医学部附属病院の研究者との共同研究であり、下記の国際誌に掲載されました。
Nagasawa N, Nakamura S, Hashimoto N, Yamazaki A, Goto Y, Araki S, Yamaguchi S, Sakuma H, Kitagawa K. Single-visit cardiac functional assessment by cine CT added to CCTA: segment-level validation of low-dose recirculation timing protocol. Eur Radiol. 2025 Nov 20. doi: 10.1007/s00330-025-12155-2. PMID: 41263964.

-副学長(大学院・研究担当)鈴木 宏治-