冠動脈狭窄や心筋梗塞の患者の診断には心臓の冠動脈CTが有効ですが、近年では血管の先にある心臓の筋肉の性状評価の重要性が指摘されています。薬剤負荷心筋パフュージョンCTは、薬剤で心筋にストレスをかけた状態でパフュージョン(心筋微小血管の循環血流量)を評価する最新の検査法です。本検査の有用性は国際的にも認められていますが、心筋へのストレスの程度が冠動脈狭窄を検出する診断精度にどのような影響を与えるかはこれまで十分に研究されていませんでした。
本学の永澤准教授らは、冠動脈狭窄の診断精度を正確に評価するため、これまで行われきた検査画像を対象として受信者動作特性(ROC)曲線を解析しました。その結果、薬剤負荷によるストレス状態において正常心筋血流量が多い患者ほど診断精度が向上することがわかりました。また、血流量の絶対値よりも相対的な血流値(正常心筋との比)でみた方が安定した診断結果を得ることがわかりました。そのため、臨床現場では血流量の絶対値よりも相対的血流値を用いる方が適していると考えられました。これらの結果から、薬剤負荷心筋パフュージョンCTによる血流測定は、心筋の血流低下をより信頼性が高く評価できることが示唆されました。
本研究は三重大学医学部附属病院を中心とした国際共同研究であり、本学放射線技術科学科の永澤直樹准教授が論文の筆頭著者となっています。
Nagasawa N, Nakamura S, Ota H, Ogawa R, Nakashima H, Hatori N, Wang Y, Kurita T, Dohi K, Sakuma H, Kitagawa K. Relationship between microvascular status and diagnostic performance of stress dynamic CT perfusion imaging. Eur Radiol. 2024; Published online: 1-11. https://doi.org/10.1007/s00330-024-11136-1
注釈:受信者動作特性 ROC (receiver operating characteristic curve)
-副学長(大学院・研究担当)鈴木 宏治-