本学教員による、漢方薬のパラインフルエンザウイルスに対する増殖抑制効果に関する研究成果が、Drug Discov Ther誌に掲載されました。

2021年10月08日

ヒトパラインフルエンザウイルス(human parainfluenza virus: HPV)は呼吸器疾患の原因ウイルスの1つであり、特に6歳未満の小児の肺炎、気管支炎などの下気道炎の原因ウイルスとしてはRSウイルス(Respiratory syncytial virus: RSV))に次いで多いことが知られています。

HPVは気道の炎症を引き起こすという点ではインフルエンザウイルスと似ていますが、まったく別のウイルスであり、HPV感染に対する有効な治療薬は未だに開発されていません。

医療栄養学科の植松講師らは、風邪および呼吸器疾患に効果があるとされる13種類の漢方薬について2型HPVに対する増殖抑制効果を調べました。方法はアカゲザル腎由来細胞の培養液に漢方薬を加えた後に2型HPVを感染させ、ウイルスの増殖を抑制する漢方薬の選択とその作用機序について分子生物学的手法を用いて解析しました。その結果、13種の漢方薬のうち、葛根湯、葛根湯加川芎辛夷、苓甘姜味辛夏仁湯の3薬に強いウイルス増殖抑制効果を認めました。また、その作用機序は、インフルエンザウイルスに対するものとは異なることを明らかにしました。

この研究成果は、HPVに対する特異的治療薬の開発に重要な基礎的情報を提供するもので、極めて有意義であると思われます。

本研究には、医療栄養学科 植松淳講師、元薬学科 山本秀孝教授等が参画し、研究成果はバイオ&ソーシャル・サイエンス推進国際研究交流会が発行する国際雑誌Drug Discoveries & Therapeuticsに掲載されました。

Uematsu J, Yamamoto H, Kihira S, Sakai-Sugino K, Ishiyama Y, Chindoh M, Baba A, Kazuta R, Hasegawa T, Fujimoto K, Funauchi A, Itoh A, Ookohchi A, Satoh S, Maeda Y, Kawano M, Tsurudome M, Nishio M, Hirai K, O’Brien M, Komada H. Inhibitory effect of traditional herbal (kampo) medicines on the replication of human parainfluenza virus type 2 in vitro. Drug Discoveries & Therapeutics. 2021; 15:180-188. DOI: 10.5582/ddt.2021.01059

-副学長(大学院・研究担当)鈴木宏治-