本学教員と天津中医薬⼤学の共同研究「鍼治療効果に対する線維芽細胞の寄与」に関する総説論⽂が国際学術誌Frontiers in Bioengineering and Biotechnologyに掲載されました

2025年11月10日

鍼治療の機序に関する研究は、これまでは主に神経調節の視点を中⼼に⾏われてきました。こうしたなか、本学東洋医学研究所の有⾺寧教授らと天津中医薬⼤学の郭義教授らの研究グループは、鍼治療効果の機序として神経調節とは異なる観点から、物理刺激に対する線維芽細胞の応答に着⽬し、鍼治療における線維芽細胞の役割とその分⼦機序について研究を⾏ってきました。線維芽細胞は、コラーゲンを合成して細胞外マトリックスを形成し、機械的信号に反応する性質を持っており、さらにインテグリン及びG タンパク質共役受容体を介して機械的刺激を感知し、細胞⾻格のリモデリングを通じて機械的信号を化学的信号に変換することによって局所的及び全⾝的な⽣理学的反応に影響を与えることが知られています。加えて最近の両教授らの研究から、鍼治療の開始時には、線維芽細胞が、肥満細胞、マクロファージ、その他の細胞と相互作⽤し、⽣理的に重要な役割を果たすことが⽰唆されていました。

この度、有⾺教授と郭教授のグループは共同で「鍼治療効果に対する線維芽細胞の寄与」に関する総説論⽂を発表し、その中で、鍼刺激後のラットの経⽳(ST-36:⾜三⾥)における形態学的変化とfibroblast growth factor-2の発現変化を解析し、鍼治療における引き上げ・押し込み及びねじり操作が鍼軸とコラーゲン線維の絡み合いを誘発し、その結果として線維芽細胞の機能発現が増強される可能性を⽰しました。さらに本論⽂では、経⽳の局所線維芽細胞に対する機械的⼒としての鍼治療の影響と、線維芽細胞の鍼治療効果に対する関与に焦点を当て、鍼治療における機械的-⽣化学的反応が線維芽細胞の機能発現に果たす役割について体系的論理的に考察されています。

本論⽂は、本学の川ノ⼝ 潤 准教授、髙⽊ 健 准教授、有⾺ 寧 教授、及び天津中医薬⼤学の研究者によって執筆され、下記の学術雑誌に掲載されました。
Tu S-W, Kawanokuchi J, Takagi K, Liu Y-Y, Li Y-W, Li J-Y, Tu J-Y, Ma N and Guo Y (2025)Fibroblasts as key cellular targets in acupuncture therapy: a mechanistic perspective. Front.
Bioeng. Biotechnol. 13:1662525. doi: 10.3389/fbioe.2025.1662525.