昔から茸には免疫活性化作用や抗腫瘍作用のあることが知られ、近年その作用は茸に含まれる主にβ(1-3)glucanによることが明らかになり、これまでその効果が高いことから幻の茸と呼ばれてきた「ハナビラタケ(Sparassis crispa: SC)」には乾燥重量の45%ものβ(1-3)glucanが含まれていることが分かってきました。一方、乳酸菌発酵食品(味噌、醤油、漬物、チーズ、ヨーグルトなど)は、素材の風味や栄養価、保存性などを高め,かつ健康に良い食べ物として古くから世界中で重宝されています。
この背景の下、本学の平本恵一准教授、西岡淳二教授、鈴木宏治教授は、産学共同研究により、乳酸菌で発酵させたハナビラタケ溶液(Lactobacillus-fermented Sparassis crispa: LFSC)の性状とマウスの免疫能に及ぼす効果を解析しました。その結果、LFSCにはSC溶液の50倍も多いβ(1-3)glucanが含まれており、LFSCを経口投与した正常マウスの小腸上皮細胞や脾臓細胞には、自然免疫細胞(好中球、マクロファージ、NK細胞)が大量に集積していることを示しました。さらに、大腸がん細胞(Colon26)を移植したマウスでは、LFSCの経口投与により、著しく増加していた血中IL-6濃度が有意に低下し、腫瘍組織の縮小と腫瘍細胞のアポトーシス(細胞死)を認めました。こうしたマウスを用いた実験から、LFSCには、自然免疫能を高め、体内の炎症性病態を改善する作用のあることが明らかになりました(詳細は下記論文をご覧ください)。
Hiramoto K, Nishioka J, and Suzuki K. Innate immune activation and antitumor effects of Lactobacillus-fermented Sparassis crispa extract in mice. (2020) J. Func. Foods 75: 104215. https://doi.org/10.1016/j.jff.2020.104215
この度、この産学共同研究の成果に基づき、本学と共同研究企業の名を記したLFSCカプセルを詰めたパッケージが免疫力を高めるサプリメントとして商品開発されました。
―副学長(大学院・研究担当)・社会連携研究センター長 鈴木 宏治―







