がん患者数は年々増加しており、現在、肺がんの罹患者数は全がん種の第2位、死亡者数は第1位です。がん治療法の1つである放射線療法は、肺がんなどの胸部腫瘍に対する重要な治療法ですが、どうしてもがんに隣接する正常組織に放射線が照射され、正常組織に肺炎や肺線維症などの放射線誘発性肺障害を生じ、患者の呼吸機能を含む生活の質に悪影響を及ぼすことが問題になっています。
放射線技術科学科の山下剛範准教授らは、放射線照射による細胞損傷を軽減する手法に関する研究を行っており、その研究成果を2024年12月7-8日に岐阜市で開催された第16回中部放射線医療技術学術大会で「タウリンの放射線誘発性肺線維化緩和機構」と題して発表し、胸部腫瘍に対する放射線療法で起こり得る肺線維症をタウリンが緩和する分子機構を報告しました。
この研究成果は、放射線療法で問題となる放射線誘発性肺障害に対する新しい緩和医療に貢献する可能性が高く評価され、日本放射線技師会(JART)の学術奨励賞を受賞しました。タウリン投与は、がん放射線療法だけでなく、意図しない自然災害やテロリストにより引き起こされた原子力発電所等からの放射線曝露による一般人の放射線障害の軽減にも期待できると考えられます。
本研究には共同研究者として、本学大学院医療科学研究科・有馬 寧教授及び川ノ口 潤准教授、三重大学医学部附属病院・加藤俊宏氏、純真学園大学・具 然和教授が参画しました。
-副学長(大学院・研究担当)鈴木宏治-