本学教員による、Edwardsiella tarda が妊婦における母体胎児感染症の原因菌になることを明らかにした研究成果が、国立感染症研究所の機関誌Jpn J Infect Disに掲載されました

2023年02月14日

妊婦における母体胎児感染症には様々なウイルスや細菌の関与が知られていますが、未だ明らかでない原因菌の存在も考えられます。Edwardsiella tarda (E. tarda)は主に淡水生態系に存在し、多くの爬虫類や両生類、淡水魚などから分離されており、ニホンウナギのパラコロ病の原因菌として知られています。最近では、養殖ヒラメの腸管からも高率に検出され、アユが保有しているとの報告もあります。

この度、本学救急救命学科の東川正宗教授らは、E. tardaにより髄膜炎と脳出血をきたした生後6日目の新生児症例について報告しました。この症例に対する通常の髄液培養検査では本菌は検出されませんでしたが、髄液から抽出した細菌固有の16s RNAを標的として広域バンドPCR法を用いてDNAを増幅し、遺伝子配列を決定した後に、BLAST(Basic Local Alignment Search Tool)解析を行ったところ、E. tarda DNAが同定されました。本症例では、母親が在胎34週時にアユの刺身を食べた既往がありました。我が国ではこれまでに13例のE. tarda周産期感染症の報告があり、本症例と過去13例の文献的考察から、本菌の感染例では新生児に髄膜炎・脳膿瘍、脳出血を起こしやすいことが示唆されました。また、食歴が明らかな8例中4例にヒラメ、アユを含む生魚を食べた既往が認められました。以上の結果から、E. tarda が周産期侵襲性感染症を引き起こし、発症には生魚を食べる日本人の食物嗜好が関連していることが示唆され、妊娠中の女性は、淡水魚を含むリスクの高い魚の生食を控えるべきであると考えられました。研究成果は下記の論文に報告されました。

Higashigawa M, Ito M, Nashida Y. Edwardsiella tarda is an important causative agent of maternal-fetal infections in pregnant women: a case report and Japanese literature review. Jpn J Infect Dis. 2023 Jan 24; 76(1):80-83. doi: 10.7883/yoken.JJID.2022.108.

-副学長(大学院・研究担当)鈴木宏治-