本学教員と共同研究員によるヒトエグサ・ラムナン硫酸による炎症性臓器障害と血管内皮障害の抑制効果に関する研究成果が、MDPI社のMarine drugs誌に掲載されました。

2022年02月07日

グラム陰性菌由来のエンドトキシン(リポ多糖体:LPS)は、ヒトやマウスに敗血症や播種性血管内凝固症候群を誘発しますが、これはLPS刺激により動物の血管内皮や臓器が炎症性障害を受けることによります。血管内皮はグリコカリックス(GCX)と呼ばれる糖タンパク質で覆われており、GCXは血管内皮を炎症性障害から保護していますが、LPSは血管内皮や白血球に結合して炎症を惹起させてGCXを脱落させ、こうして生じた血管内皮の機能低下が臓器障害を誘引すると考えられています。

ヒトエグサ(アオサの一種)にはラムナン硫酸(RS)と呼ばれるラムノースを主体とした硫酸化多糖が多く含まれ、これまでの研究で、RSには抗血液凝固作用、抗肥満作用、抗ウイルス作用など様々な健康維持促進作用のあることが報告されてきました。

今回、著者らは、経口投与したRSが生体内で起きる炎症を抑制するかどうかを明らかにするため、LPS刺激マウスで生じる血管内皮障害と臓器障害に及ぼすRSの経口投与(一週間前から連日投与)の影響を解析しました。その結果、LPS刺激でみられた肺・肝臓・小腸などの炎症性形態変化や炎症性マーカーの発現上昇は、RS投与により有意に抑制されることがわかりました。同様にLPS刺激により血管内皮の炎症部位に白血球を結合させる接着分子の発現がRS投与で有意に抑制されていました。さらに肺血管内皮のGCX発現量はLPS刺激で減少し、RS投与によりその減少程度が抑制され、またGCXの主要な構成分子であるシンデカン4の発現量にも同様の変化が認められました。

以上の結果から、RSを日々摂食することにより、細菌感染などで起きる血管内皮や臓器の炎症性障害を予防できることが示唆されました。

本研究は江南化工株式会社(三重県四日市市)との産学共同研究として実施され、研究には薬学科の平本恵一助教と鈴木宏治教授、共同研究員の寺澤匡博氏と内田亮太氏が参画しました。研究成果は2月3日付けのMDPI社の国際学術誌「Marine drugs」電子版に掲載されました。

掲載論文:
Terasawa M, Hiramoto K, Uchida R, and Suzuki K. Anti-Inflammatory Activity of Orally Administered Monostroma nitidum Rhamnan Sulfate against Lipopolysaccharide-Induced Damage to Mouse Organs and Vascular Endothelium.
https://www.mdpi.com/1660-3397/20/2/121

-副学長(大学院・研究担当)鈴木宏治-