近年、オンライン診療やウェアラブル機器、健康アプリなどの普及により、健康に関する個人情報は多様で膨大な「デジタルデータ」として蓄積されるようになりました。これらのデータを匿名化し研究に活用すれば、新しい治療法や予防法の開発、感染症対策、個人に最適な医療(プレシジョン・メディシン)の推進など、社会全体の健康増進に貢献できると期待されています。その一方で、「どこまで自分のデータを提供してよいのか」、「誰がどのように利用するのか」といった不安も根強く、こうした市民の受け止め方を正しく把握することがデータ利活用の定着の鍵になると考えられます。
本学薬学科の福田八寿絵教授らは、18歳以上の日本人1,000名を対象にウェブ調査を行い、「どのような健康関連データなら共有してもよいと思うか」、「どのような動機があれば情報提供しようと思うか」、「どのような不安や懸念が障壁になっているか」を多角的に分析しました。その結果、約7割の人が何らかの形でデジタル健康データの共有に前向きであり、とくに「将来の患者のために役立てたい」、「自分の検査結果や研究の成果を知りたい」といった利他的な動機と自己理解への強い意欲につながっていることが明らかになりました。さらに、健康やデジタル情報に関するリテラシーが高い人ほど、データ共有に積極的である一方、「よく分からないまま同意させられるのではないか」、「データが不適切な目的に使われるのではないか」といった不信感が、共有化をためらう大きな要因になっていることも分かりました。
本研究成果は、世界的な個人情報保護(GDPR:一般データ保護規則)の潮流も踏まえ、国民の健康データに関する意識を定量的に調査し、安心してデータを利活用するための政策や制度設計に有効な示唆を与えるものであり、今後の国内外の医療のDX化や国際連携研究に貢献できるものと期待されます。
掲載論文:
Fukuda Y, Fukuda K. Public attitudes and predictors of public awareness of personal digital health data sharing for research: cross-sectional study in Japan. JMIR Human Factors. 2025;12:e64192. doi:10.2196/64192
-副学長(大学院・研究担当)鈴木宏治-






