2016年度産学官連携に関する取組成果報告会を実施しました

2017年03月29日

2017年3月29日
鈴鹿市
学校法人鈴鹿医療科学大学
日清オイリオグループ株式会社

産学官連携協力 2016年度活動内容報告

中鎖脂肪酸を含む多様な食材摂取が
健康寿命の延伸につながる可能性を示唆

〜 500名を超える鈴鹿市民の協力のもと、大規模研究を実施 〜

鈴鹿市(市長:末松則子)、学校法人鈴鹿医療科学大学(理事長:髙木純一)、日清オイリオグループ株式会社(社長:今村隆郎)は、2016年2月22日に締結した、産学官連携協力に関する協定に基づき、4つのテーマで取り組んだ結果、以下のとおり成果をあげました。これを受け、2017年度も引き続き、産学官連携での健康寿命延伸につなげる健康的な食生活(中鎖脂肪酸)の普及・啓発や鈴鹿市の地場食材を活用した地域活性化などに取り組みます。

【食生活(中鎖脂肪酸)での市民の栄養状態向上の大規模研究】 
<研究の目的と概要> 
・健康寿命の延伸に向けて健康的な食生活は有効な解決手段と考えられますが、一方で、食の習慣は個人の嗜好とも結びつき、日々の生活で改善していくこと(行動変容)は簡単ではないとも言われています。
今回の大規模研究では、

①献立メニュ-(鈴鹿産の地場食材をふんだんに使うとともに、中鎖脂肪酸を含む食用油を使ったレシピを、鈴鹿医療科学大学の中東 真紀准教授が作成・監修したもの)やチェックシートの提供による食生活習慣の改善・定着
②多様な食材摂取による栄養状態の改善

以上を目的に研究を行いました。

・45歳~79歳鈴鹿市民(調査対象者503名)にご協力いただき、約1か月間、健康によいと言われる10種類の食材(※1)と中鎖脂肪酸を含む食品を毎日食べる食生活改善を推奨したうえで、前後の変化を調べました。また、推奨前後に採血した98名(60~79歳の方)の血液を分析するとともに、認知機能検査を実施し、推奨前後の変化を調べました。
その結果、中鎖脂肪酸を含む多様な食材を摂取したことで、健康状態が良好になり、加齢に伴い低下する機能の維持や低下防止につながる可能性、ひいては健康寿命の延伸につながる可能性を見いだすことができました。

※1.肉、魚介類、卵、牛乳・乳製品、大豆・大豆製品、緑黄色野菜、いも類、海藻類、くだもの、油を使った料理

<結果> 
○ 摂取食材数が増加しました(503名全体) 
推奨1週目 7.6種類/11種類 → 推奨4週目 7.9種類/11種類
(食生活改善の推奨によって、ほとんどの食材で摂取率が高まった。
一方、一部に摂取率が低い食材があるため、摂取が少ない食材をいかに食べていただくか、
という視点で2017年度はさらなる普及・啓発活動を実施する)

○ 栄養状態の向上に伴い、血液中のIGF-1(※2)の濃度が改善しました 
多様な食材摂取を推奨する前後で、60~79歳の方(98名)の血中IGF-1の数値が以下のとおり有意に増加しました。また、赤血球のMCV、MCH、MCHC(※3)も有意に上昇しました。

(IGF-1)
推奨前 103 ± 26 → 推奨後(4週目) 108 ± 28 (単位:ng/ml)

IGF-1は、タンパク質合成促進・分解抑制の作用を持ち、神経細胞保護に働くことから、多様な食材摂取(健康によいと言われる10種類の食材+中鎖脂肪酸を含む食品)の推奨が、サルコペニア(全身の筋力低下および身体機能の低下)の予防や認知症の予防につながる可能性が示唆されました。

(MCV)
推奨前 94.7 ± 3.7 → 推奨後(4週目)95.1 ± 3.4 (単位:fℓ)

(MCH)
推奨前 30.9 ± 1.3 → 推奨後(4週目)31.2 ± 1.4 (単位:pg)

(MCHC)
推奨前 32.7 ± 0.8 → 推奨後(4週目)32.9 ± 0.8 (単位:%)

※2.IGF(インスリン様成長因子)-1は、赤血球産生促進、骨形成、免疫増強などに働き、細胞の増殖・分化誘導・機能維持、細胞死の抑制などの作用が知られており、一生を通じ、良好な栄養状態、成長ホルモン分泌、インスリン分泌によりその産生が維持される。

※3.MCV:平均赤血球容積、MCH:平均赤血球ヘモグロビン量、MCHC:平均赤血球ヘモグロビン濃度いずれも赤血球の状態を詳しく知るための検査指標。貧血等の原因を知るのに役立つ。

○ (健常な方の)一部の認知機能の低下を抑える可能性が見いだされました 
60~79歳の方(98名)を対象に、多様な食材摂取の推奨前後で、認知機能スクリーニング検査(※4)を実施したところ、総合的な評点が増加傾向となり、5項目の検査のうち、即時再認と呼ばれる検査項目では有意に得点が増加しました。
この結果、多様な食材摂取(健康によいとされている10種類の食材+中鎖脂肪酸を含む食品)の推奨が、健常な方の認知機能の低下を抑える可能性が示唆されました。

(5項目の総合評点[15点満点])
推奨前 14.2 ± 1.3 → 推奨後(4週目)14.4 ± 0.9 (単位:点)

(即時再認[3点満点])
推奨前 2.9 ± 0.3 → 推奨後(4週目) 3.0 ± 0.1 (単位:点)
※4.「物忘れ相談プログラム(日本光電工業株式会社)」を使用。言葉の即時再認、日時の見当識、言葉の遅延再認、図形認識1、図形認識2の5つの検査項目を実施する。

<監修医師のコメント>

加藤 一彦
医療法人社団彦仁会 かとうクリニック

大阪医科大学を卒業後、東京女子医科大学第二外科入局。
聖隷浜松病院、東京労災病院、グンゼ病院、藤立病院(現・総合医療センタ-成田病院)、渋谷東急クリニック、虎の門病院勤務を経て、1995年から現職。狛江市医師会理事。

今回の実証研究は500人超の一般市民を対象としており、このような規模で産学官が連携して行ったことは貴重な取り組みだと思います。

また、「多様な食材」を摂り、中鎖脂肪酸のような機能性のある食品成分を摂ることで、血清中のIGF-1濃度や赤血球のMCV、MCH、MCHCの上昇といったからだの栄養状態を充足させたこと、健常者の認知機能の低下を抑える可能性を見いだせたことは、とても好ましいことです。

薬だけに頼るのではなく、こうした身の回りの食材やそれに含まれる成分を利用し、さまざまな生活習慣病の改善や予防につなげることが重要だと考えます。

【食生活(中鎖脂肪酸)の基礎的研究による機能性の解明】 
人為的に低栄養状態(低タンパク質状態)にしたマウスに、長鎖脂肪酸あるいは中鎖脂肪酸を含んだ餌を与え、これらのマウスに炎症性物質を投与したときに生ずる脳の病態変化を比較する実験を行いました。その結果、中鎖脂肪酸を摂取したマウスでは、長鎖脂肪酸を摂取したマウスに比較して、脳内の炎症性病態が軽減され、また低蛋白血症も軽減される効果が認められました。この結果は、中鎖脂肪酸を摂取することにより、低栄養状態時に起しやすい認知症の発症予防および進行抑制ができる可能性を示唆するものと考えています。

【食生活(中鎖脂肪酸)での認知症罹患者の栄養状態改善検証】 
2017年3月26日(日)、鈴鹿市内の小規模通所介護事業所「長太の寄合所『くじら』」が月1回程度開催している認知症カフェ「D-カフェ」において、認知症の方やそのご家族、地域の方をお招きし、鈴鹿の地場食材とココナッツオイルを使用したカレーやスープ、デザートを食事として召し上がっていただきました。今後もこうした活動を広げていきたいと考えています。

【地場食材の認知向上と利用促進】 
鈴鹿産の地場食材をふんだんに使うとともに、中鎖脂肪酸を含む食用油を使ったレシピを、鈴鹿医療科学大学の中東 真紀准教授が作成・監修し、今回の大規模調査に参加いただいた鈴鹿市民全員にレシピ集を配付しました。

2016年6~9月には、鈴鹿市の地場食材と中鎖脂肪酸を含んだ食用油を使ったレシピのコンテスト「さぁ、きっと もっと 鈴鹿。健康レシピコンテスト」を実施しました。応募総数128点の中から第一次審査の結果、入賞レシピ8作品を選出し、2016年9月24日(土)に鈴鹿市文化会館において、本審査会を開催し、最優秀賞1点のほか、優秀賞2点、特別賞2点、入賞3点を決定しました。

また、2016年7月27日(水)、28日(木)に、鈴鹿市の地場食材と中鎖脂肪酸を含んだ食用油を使用したレシピを鈴鹿市民に紹介することを目的に、「ポリ袋料理で健康づくり」講座を開催し、MCTオイルとポリ袋レシピを組み合わせた “MCTオイルポリ袋健康レシピ”を紹介しました。

【2017年度の取組みについて】 
今回の大規模研究の結果、中鎖脂肪酸を含む多様な食材の摂取の推奨が健康寿命の延伸につながる可能性が見いだせたことから、中鎖脂肪酸を含む多様な食材を無理なく、手軽に毎日の食生活に取り入れていただけるよう、料理教室の開催、小売店との連携などを通じて、さらなる普及、啓発活動を実施してまいります。
また、食生活(中鎖脂肪酸)に関する基礎的研究からの機能性の解明も引き続き進めてまいります。

以上

リリースに関するお問合せ先:

鈴鹿市 産業振興部 産業政策課 望月
TEL:059-382-9045
〒513-8701 三重県鈴鹿市神戸一丁目18番18号
学校法人鈴鹿医療科学大学 法人事務局 企画課 山口
TEL:059-340-0330
〒510-0293 三重県鈴鹿市岸岡町1001番地1

日清オイリオグループ株式会社 コーポレートコミュニケーション部 広報・IRグループ 北川
TEL:03-3206-5109
〒104-8285 東京都中央区新川一丁目23番1号